AIブームに乗り遅れたくない気持ちはわかる。でも「ChatGPT株を買いたい」と証券会社に電話して、「それOpenAI社で上場してないんです」と言われて恥ずかしい思いをした人、実は結構いるらしい。安心してほしい。あなただけではない。
AIバブルの正体を見抜く
2024年のAIブームは、まるで平成のITバブルの再来だった。「AI」と名前につくだけで株価が跳ね上がり、実際にはAIとは全く関係ない会社まで便乗して社名変更する始末。某老舗製造業が突然「○○AI」に社名変更したときは、さすがに証券取引所も苦笑いしていた。
現実的なAI投資を考えるなら、まずは「インフラ組」から攻める手がある。NVIDIA、AMD、インテルといった半導体メーカーは、AIの頭脳となるチップを作っている。特にNVIDIAの株価は2023年から2024年にかけて5倍近く上昇したが、これでも「まだ始まり」という専門家も多い。
ただし注意が必要なのは、これらの株は既に「織り込み済み」の可能性が高いこと。つまり、期待値が既に株価に反映されているため、ちょっとした業績の鈍化で大暴落する危険性もある。実際、2024年夏にNVIDIA株が一日で約10%下落したときは、「AI終了」とまで騒がれた(もちろん翌日には反発したが)。
日本株で狙い目なのは、意外にも「縁の下の力持ち」系企業だ。AIデータセンター向けの冷却装置を作るダイキン工業、AIチップの製造装置を手がける東京エレクトロン、さらにはAI学習に必要な大量の電力供給で恩恵を受ける電力会社まで、AI関連銘柄は思っているより身近にある。
賢い庶民のAI投資戦略
個人投資家が陥りがちな罠は「AI企業に直接投資しなければ」という強迫観念だ。でも考えてみてほしい。ゴールドラッシュで一番儲けたのは、金を掘った人ではなく、ツルハシを売った人だったという有名な話がある。AI時代のツルハシとは何か?
答えは意外にシンプルで、「AIが使う電気」「AIを冷やす装置」「AIを運ぶ回線」「AIを格納するデータセンター」といった、地味だが確実に需要が見込める分野だ。関西電力の株価が密かに上昇しているのも、AI需要による電力消費増加が背景にある。
投資信託やETFを活用する手もある。「AI関連株式ファンド」なら、素人には判断が難しい銘柄選定をプロに任せられる。特に海外のAI企業にも分散投資できるグローバルファンドは、為替リスクこそあるものの、日本だけでは投資できない有望企業にアクセスできる。
ただし、ファンドマネージャーも人間である以上、完璧ではない。2023年に某大手投信会社のAIファンドが、実はAIとは無関係な銘柄を大量保有していたことが発覚し、投資家から「詐欺だ」と批判された事件もあった。目論見書はしっかり読もう。
現実的なアドバイスとしては、「生活を脅かさない範囲で」「分散投資を心がけ」「一攫千金を狙わない」ことだ。AIは確実に我々の生活を変えつつあるが、その恩恵を受ける企業や業界を正確に予測するのは、専門家でも至難の業だ。
最後に一つ。「AIに投資する」のと同じくらい大切なのは、「AI時代に対応できる自分に投資する」ことかもしれない。プログラミングスクールの株を買うより、自分がプログラミングを学んだ方が確実にリターンが得られるかもしれない。これも立派な投資だ。
結論として、AI投資は「夢」ではなく「現実」として向き合うべきテーマである。派手な成功談に惑わされず、地に足のついた投資判断を心がけたい。
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